大学職員の仕事を理解するのに、もっとも効果的なのがOB・OG訪問です。
ところが、大学職員へのOB・OG訪問は、「周囲にお願いできる大学職員がいないから難しい」と感じたことはありませんか?
- OB・OG訪問って何を聞いたらいいの?
- 周りにお願いできる大学職員がいない…
- 他の方法で仕事について知る機会が欲しい
これまでに50名以上からOB訪問を受けてきた現役大学職員が「OB・OG訪問を想定して」教務課で働く現役の大学職員モモさんにインタビューしました。
この記事では、教務課の仕事内容が分かるだけでなく、OB・OG訪問の様子についても理解することができます。
「志望動機や就職後にやりたいことが上手く書けない…」という方は、大学職員の業務理解が足りていないことが原因です。
OB・OG訪問を通じて、世間であまり知られていない大学職員の仕事を、より理解していきましょう。
- OB・OG訪問の内容がわかる
- 大学職員の志望理由が見つかる
- 大学職員の選考・面接対策になる
教務課で働く大学職員の仕事内容について
モモさんの業務内容について教えてください。
順番に説明していきますね!
私、大学職員モモは教務課で働いています。
教務課での主な業務は
- 全学生の情報管理
- 授業・履修・成績データの管理
- 教授会の運営
この3点です。
教務課にはたくさんの業務があるので、私が担当している業務はほんの一部です。
学生の情報管理をする大学職員の仕事とは
規模の大きな大学では、ひとつの大学で数万人という学生が在籍しています。
例えば、「50,000人の学生が在籍」と聞くと、数字の多さに驚きますが、これは学生ひとりひとりが集まった数値です。
大学に在籍している学生は、学籍番号といわれるどの学生とも被らないオリジナルの番号を持っています。
大学では、学籍番号をもとに学生ひとりずつに対して学籍情報というデータを管理しています。
学籍情報とは、1人の学生が入学から卒業までに行う学籍異動を管理した情報を指します。
学生の主な学生異動一覧
- 入学
- 休学
- 進級
- 除籍
- 退学
- 卒業
- 再入学
- 編入学
学籍異動にはこれだけの種類があります。
学籍情報では、これらの学籍に関する手続き情報を学生1人につき1回の学籍異動ごとにすべてデータで管理しています。
学生Aさんを例に、入学から卒業までの学籍異動を見てみましょう。
学年 | 学生異動種類 | 累計学籍異動データ |
---|---|---|
1年生 | 入学 | 1回目 |
2年生 | 進級 | 2回目 |
3年生 | 進級 | 3回目 |
4年生 | 進級 | 4回目 |
4年生 | 卒業 | 5回目 |
このように1人の学生につき、休学や留年をしなかった場合でも5つの学籍異動データを保管することになります。
大学で管理している学籍データは、「在籍中の学生」だけではありません。
卒業生や退学者の学籍データについても、永久的に保存する必要があります。
- 1人の学生につき平均6データ
- 毎年の新入生が20,000人
- 今年が創立120年の大学
これらの条件で単純計算してみると、
「6×20,000×120=14,400,000」
学籍データは、その人が大学に在籍していた証拠になる重要なデータなので、これだけのデータを単年度ではなく、永久的に保管しておく必要があります。
このほかにも大学では、成績データや入試データなどさまざまなデータを管理しています。
膨大のデータを管理するためには、クラウド使用料や人件費などコストもかかります。
大学はたくさんデータを持ってるのよ!
授業・履修・成績を管理する大学職員の仕事
学生は毎年、「科目を履修 → 試験を受ける → 成績が付く」というサイクルで、卒業に必要な単位を修得していきます。
大学では、学生ひとりひとりについて、入学から卒業までに、
- いつ(202○年○学期)
- どの科目を履修して
- どの評価の成績が付いて
- 何単位を修得したのか
という情報をすべて管理しています。
この成績データがしっかりと管理できていなければ、学生が卒業に必要な単位数を修得しているか分からず、卒業の判定ができなくなります。
成績データは卒業後も成績証明書など証明書を発行する際にも使用します。
授業・履修・成績データの管理は大学の信用に直結するので、正確に取り扱う必要があります。
- 卒業要件の単位数が160単位
- 4年間の履修科目が80科目(1科目2単位の場合)
- 毎年の新入生が20,000人
- 今年が創立120年の大学
これらの条件で単純計算してみると、
「80×20,000×120=192,000,000」(およそ2億件のデータ)
以下の記事では教務課の授業や履修に関わる仕事についてさらに詳しく解説しています。実は半年以上も前から来年度の授業について準備している実態を見てみましょう。
教授会の運営も大学職員の仕事なの?
「教授会」って聞いたことありますか?
教授会とは、学校教育法第93条「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」によって定められた各大学の意思決定機関です。
規模の大きな大学では、学部ごとに教授会が設置されています。
教授会には、設置されている学部に所属する教員が教授会委員となって参加していて、「教育・研究に関する内容」について、今後、自分たちの学部がどのように取り組むのかを、議論し、意思決定を行います。
教授会の運営は学部長を議長として執り行い、大学職員も教授会の運営に携わります。
- 議題・報告・懇談の選定
- 教授会運営に向けた各方面との調整
- 主要各所への事前説明
教授会には、それぞれの主張を持った教員が参加するため、自由に議論をしていては、いつまでたっても議論がまとまりません。
そのため、教授会の運営には、事前の準備が欠かせないのです。
大学職員は、教授会運営に向けて「議題の要点や決議したい方向性」などの確認のため、毎週のように学部長と打ち合わせを行います。
そのため、教務課で働く大学職員は大学教授と非常に距離の近い職業といえます。
「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」(平成26年法律第88号。)が平成26年6月27日に公布され、平成27年4月1日から施行されることとなりました。
これを受け、「学校教育法施行規則及び国立大学法人法施行規則の一部を改正する省令」(平成26年文部科学省令第25号。)が平成26年8月29日に公布され、平成27年4月1日から施行されることとなりました。
法改正の趣旨として、学長のリーダーシップの下、戦略的な大学経営が可能となるよう、副学長制度や教授会の役割を明確にし、大学ガバナンスの強化に努めることがあげられます。
これを受けて、各大学では副学長制度を新設したり、教授会の権限を明確にするための学則改正などを行いました。
このように大学の運営には国、法制度、文部科学省などの動向が関係してきます。
さらに詳しく知りたい方は、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律及び学校
教育法施行規則及び国立大学法人法施行規則の一部を改正する省令について(通知)」を参照してください。
大学職員の仕事で記憶に残った経験は?
記憶に残っている経験を教えてください
そうですね~、学生や教授とたくさんお話しをするからね!
教務課での仕事は毎日が濃くて、記憶に残る出来事もたくさんあります。
なかでも、記憶に残る出来事をまとめると、以下の2点ですね。
- 学生と話す機会の多さ
- 教授との距離の近さ
「昨日と同じ日はない」と言いますが、教務課での仕事はまさにそうです。
単調な日はほとんどなく、いつも何かしらの出来事がどこかで起きている。という感じです。
教務課で働く様子を順番にお話ししていきますね。
教務課は学生と話す機会が多い部署
学生は困りごとや申請があると、最初に教務課の窓口に来ることが多いです。
学生からの相談内容は多種多様で、一人暮らしをする学生の悩みから奨学金のことまで幅広く寄せられます。
相談の中には、緊急性・事件性を伴う相談もあるため、教務課で働く大学職員は「素早い判断と適切な対応」が求められます。
「すべて自分で解決!」はダメな大学職員の対応例
私たち大学職員には、担当の業務があり、専門性を必要とするケースの場合は、適職者を雇用しています。
教務課で働く大学職員に求められることは、すべて自分で解決しようとするのではなく、担当者につないだり、臨床心理士・公認心理師資格を持っているキャンパスソーシャルワーカーにつないだりという状況に応じた適切な判断です。
- 学生の悩みは何か?
- 根本にある原因は何か?
- 最悪のケースを回避するような対応
これらの判断を瞬時に行いながら、学生とお話しすることが多いですね。
自分の仕事だけしか知らない職員はNGだよ!
教務課は教授と接する機会が多い
教務課では、教授会の運営も担っているので、学部長とは毎週のように打ち合わせを行います。
このほかにも、学部運営をサポートする教務課では、学部として、現状の認識や、取り組むべき課題など、教員・大学職員の間でさまざまな議論をしています。
例えば、入学者の増加を見込んで「新しい入試制度を導入する」となった場合に、学部長と大学職員でまずは方向性を考えます。
- どこで(学部内の組織)検討するのか?
- 複数の教員で構成される部会に検討を依頼するか?
- 検討ワーキンググループを設置するか?
教員には、講義以外の校務があるという部分は学生からあまり見えづらいところです。
教員が講義以外にも大学の仕事をしているということは、その分だけ大学職員と関わっていることになります。
教務課では、教員からの問い合わせや相談ごとが多く、教員との距離の近さを感じます。
教授と仕事をする際に意識することは?
教員対応で意識することは3つです。
教員対応で意識することは、この3つです。
- 曖昧な情報は流さない
- 「教員時間」があることを意識する
- 質問の意図を考える
教員は、研究者として9時~18時の就業時間にとらわれず仕事をする方が多くいます。
そのため、深夜遅くにメールが届くこともあるので、大学職員の勤務時間とは違いがあることを念頭に置いています。
教員と関わる教務課で仕事をする上では、質問の意図を考えることが重要です。
教員対応に限った話ではないですが、社会において「文字通り、言葉通り」の解釈をしていては通用しないことが数多く存在しますね。
若手の頃からたくさん失敗して学ぶことも、とっても大切ですよ!
大学職員としてやりがいを感じる瞬間は?
教務課の仕事でやりがいを感じる瞬間はありますか?
学生からお礼を言われるときに…
教務課での仕事でやりがいを感じる瞬間はたくさんありますよ!
最近、特に嬉しかったことは「学生から名前を呼んでお礼を言われたこと」ですね。
教務課にいると、色んな学生から同じ質問を何度も受けることもあります。
教務課の職員であれば毎年、同じような質問や相談を数百回も聞いているケースもありますが、目の前の学生は今日初めて、教務課に来た学生かもしれないんです。
その意識を常にもって、学生と接するようになってからは、私の名前を覚えてもらい話しかけられることが多くなりました。
学生が「教務課職員の名前を覚えてお礼を伝える」ということは、学生のためになったからこそでだと思います。
学生からの感謝の気持ちを肌で感じた出来事がとても嬉しい瞬間でした。
大学職員として次に希望するキャリアは?
モモさんは次に異動したい部署はありますか?
次は全体最適を考える仕事がしたいです!
次に異動したい部署は、いくつかありますが、経理部で働いてみたいですね。
教務課の仕事では、さまざまな制度や助成などを学生たちに案内してきました。
何より、学生と距離の近い部署なので、現場の生の声を聞いてきました。
- こんな制度があれば学生のためになる
- この制度をより手厚くしたい
という学生目線での提案ができるのですが、大学も収入に限りがあるので。「できること、できないこと」がありますよね。
経理部で働くことで、大学の財務体制や予算配分について、考える機会を得たいと思います。
教務課で学生に焦点をあてた部分最適を理解したので、次は大学全体の全体最適をとらえる力を養いたいと思っています。
就活生・転職活動中の方へのメッセージ
この記事の読者さんにメッセージを!
大学という環境は可能性が無限大ですよ!
ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。
大学職員モモから皆さんにメッセージです。
この記事を読んでいただいている方は、就活生や転職活動中の方が多いと思います。
教務課での仕事は、処理していくタスクも多く、素早い判断が求められます。
学生や教授との距離が近いのも特徴ですね。
立場や考え方は違えど、同じ大学人が集まる環境なので、円滑な人間関係の構築も欠かすことができません。
特定の分野の第一線で研究者として活躍する教授と話をしていると、「自分には誇れるものがあるのか?」と引け目を感じることもあります。
ですが、多様性の環境である大学に勤める以上、自分ならではの強みや特徴を自覚して発信・還元していかなければいけません。
「大学という環境が自分を育ててくれる」のではなく、自分が大学に還元していく気持ちが大切だと思います。
大学職員の同僚や教授も頑張っている人には優しく手を差し伸べてくれるものですよ!
皆さんと大学業界で一緒に仕事できる日を楽しみにしています。
まとめ
「大学職員にOB・OG訪問してみた」シリーズで、教務課で働くモモさんのお話を紹介しました。
教務課という学生と最も距離が近い部署では、学生相談に加えて、教授たちとの仕事がたくさんあることがわかりました。
モモさんの「自分にできることを還元する姿勢」が響きました。
今回、紹介した教務課の仕事は、まだまだ一部ですが、学生からは見えていない大学職員の仕事がわかったのではないでしょうか。
ご自身の経験を踏まえて、志望動機などを考える際の参考にしてください。
「大学職員にOB・OG訪問してみた」シリーズでは、次回も異なる部署のOB・OGにインタビューしていくので楽しみにしてください。
はじめてのOBOG訪問はだれでも緊張するものです。
大学職員の人数が少ない以上、あなたのまわりに相談できる大学職員がいないことは仕方のないことです。
- OBOG訪問で何を質問したらいいかわからない
- 大学職員の仕事内容をもっと知りたい
- 自己分析やエントリーシートを見てほしい
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